子どもの痙攣
代表的な小児けいれんの原因は熱性痙攣です。これは通常38度以上の発熱に伴って乳幼児期に生ずる発作性疾患で、中枢神経感染症や代謝異常、その他明らかな発作の原因疾患のないものと定義されています。5歳以下のこどもが高熱を出した際によくみられ、1分程度で収まれば予後は良好、問題はありません。子供の約1割程度に見られ、遺伝的なものも含まれるので、親の幼少時にこのような症状がなかったのかと知るのも参考です。
高熱の出る感染症の代表的なものとしては、インフルエンザ、突発性発疹、麻疹、アデノウイルス感染症などがあります。熱性痙攣も起こしやすいですが、インフルエンザによる痙攣では、特に脳の病気に注意が必要となります。
医者に駆けつけなければならないケース
- 極度の痙攣
- 短い間隔で繰り返し発作がある時
- 低血糖を伴う時
- 意識レベルの低下、異常言動
- 髄膜炎の疑い
- 1歳未満
- 全身の状態が悪い時
- テオフィリン製剤が使われている時
代表的な小児痙攣の原因
てんかん | 特発性てんかん 症候性てんかん |
熱性痙攣 | 無し |
感染症 | 髄膜炎、脳炎、胃腸炎関連痙攣 |
頭蓋内出血 | 頭部外傷、出血性疾患 |
無/低酸素症 | 窒息、一酸化炭素中毒 |
脳腫瘍 | 無し |
脳血管障害 | 無し |
代謝性障害 | 低血糖、低カルシウム血症、低・高ナトリウム血症、先天性代謝異常症 |
中毒 | 薬物、感染症 |
急性脳浮腫 | ライ症候群、予防接種後の急性脳症 |
外傷性 | 早期外傷後痙攣 |
熱を伴う痙攣であっても、熱性痙攣とは限りません。その場合はてんかんの初発症状という場合もあります。低血糖、気管支拡張薬によるものや低ナトリウム血症、ノロやロタウイルス感染による胃腸炎関連の痙攣もあります。
長時間痙攣が続いたり、頻繁に繰り返し起きるとき、そして無熱性の痙攣があるときは注意が必要です。画像診断を行い、痙攣の原因を具体的に確かめることが重要です。
熱性痙攣の緊急処置
分泌物があれば、鼻・口腔内を吸引し、酸素を使用します。バイタルチェックをした上で、いつでも挿管出来る準備をし、2~3分以内に自然軽快しなければ、抗けいれん薬を注射します。医者が間に合わないような事態に備え、看護師や家族でジアゼパム(Diazepam)坐薬の緊急時の使用方法をよく理解している人がいれば、使用してもよいでしょう。抗けいれん薬はいずれも呼吸抑制作用があるので、人手を素早く集めることを心がけます。
けいれんの重積
けいれん重積状態とは、痙攣が頻発し、発作の間欠期に意識が戻らない状態、また、発作が30分以上連続する状態をいいます。大体10分以上続けば重積の可能性が高く見られてきます。
低血糖による痙攣重積は予後不良で、精神遅滞をきたす可能性があるので、必ず血糖は確認しておくほうがよいでしょう。万が一にも糖尿病でインスリンを多量に打ってしまった経歴が無いかなど確かめる必要があります。低血糖であれば、グルコースの静注だけで痙攣は止まります。
全般性強直間代性けいれん重積の場合、90~120分続けば脳神経の損傷が始まると言われています。脳浮腫や高カリウム血症が進行するので重積は緊急的に止める必要があります。
脳浮腫対策
30分以上の痙攣、もしくは頭部CTで脳浮腫が認められた場合は脳浮腫対策が必要となります。浸透圧利尿薬の濃グリセリン(グリセオール®)とD-マンニトール(マンニットール®)があります。
グリセオール®は5~10mL/kg/回を2~4回/日、生食に溶解されているので高ナトリウム血症に注意して使いましょう。インフルエンザが疑われている場合でも、未診断の先天性代謝異常症が隠されている可能性もあり、グリセオール®により重篤な低血糖を起こし、難治性けいれんの原因となるため推奨されません。
急速な脳圧低下を必要とする時はマンニットール®を2.5mL~5mL/kg/回を1回30分~1時間ほどかけて5回/日点滴静性するが、リバウンドに注意しましょう。いずれも果糖不耐症には禁忌であり、また後者は腎障害にも禁忌です。
けいれんを止めるには
熱性痙攣の1/3から1/2は幼少期に1度のみが基本的です。初回の痙攣のあとに、あるいはそれ以後発熱のたびにジアゼパム坐薬を入れるべきか、よく検討すべきでしょう。使用後にふらふらしたり、異常興奮したり、脳症と鑑別しにくくなることがあります。
ジアゼパム坐薬は発熱時に使用した後、2回めは8時間後、3回めは状況によって、初回から24時間以上あけて使用することです。
親への指導
突然我が子が痙攣を起こしそれを目の当たりにした時、人生経験に一度もないくらいに驚愕してしまうでしょう。銭湯にいた父親子が、突然子供が痙攣を起こし、驚いた父親が素っ裸で近くの病院に駆けつけたという逸話があります。現在の日本では、ジアゼパム坐薬を常備しているところが多く、38度以上で使うと指導されていることが多いです。しかし、前述のようなデメリットもあり、また使ったかからといって完全に予防できるとは限りません。熱性痙攣が予後良好であることを十分理解しましょう。